ボーダレス
ぼくの船の国境線
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Bedone Marz
Borderless
© Mojtaba Amini
昔、人間は天に近づこうと高い高いバベルの塔を作りました。
その頃、人間はひとつの言葉を話し、みな理解し合うことができていたのだそうです。
天上の高みからそれを見ていた神は人間の小賢しさに怒り、
塔を壊し、ひとつの言葉で通じあっていた人々の言葉をバラバラにし、
通じ合えないようにしてしまいました。
昔の人々がそんな大それたことさえしなければ、
神様も癇を立てることはなかったのでしょうね(でも、神様って怒り過ぎ)。
私たちも苦労して外国語を学ぶ必要はなかったのに、
あ~あ
と、いまさら文句をいっても仕方ないですが。
こんな古い話を持ち出したのは、
本作『ボーダレス ぼくの船の国境線』には
一艘の廃船の中でたまたま一緒に過ごすことになった
言葉が通じない3人の人物が登場するからです。
それぞれがペルシャ語、アラビア語、英語を話すのですが、
3人が3人とも自分の言葉しか話せないし、理解することができません。
この3人に限らず、みんなが1つの言葉で意思を通じあえたら
どんなに楽で平和だったろうなぁと思います。
本当に神様って癇癪持ちなんだから。
本作はイランの新鋭アミルホセイン・アスガリ監督の作品です。
アミルホセイン・アスガリ監督
1978年テヘラン生まれ。演劇界でキャリアをスタートさせる。
現代演劇を専攻後、映画・TV界に入り、50本以上の映画やシリーズで助監督を務める。
“Maybe Another Time”で初めて短編映画を手掛けた後、本作で長編デビューした。
東京国際映画祭でプレミア上映され、大きな反響を呼んだ。
監督にとってボーダレス=国境がない、ということは
夢であり、希望なのだそうです。
国境があるから戦争が起きる。
本来、人と人の間には壁はなく、
人々の心が通じ合えば国境なんかなくてもいい・・・
イラン・イラク戦争世代である監督はそう信じています。
イランといえば現状への不満や批判を、
子どもを通して描いた名作が多いのですが、
本作もそんな作品のひとつです。
主人公は一艘の廃船に住む少年。
イラン・イラクの国境の河に打ち棄てられた船に暮らし、
魚や貝を獲ってたった一人で生活しています。
廃船に一人で暮らす少年といえば同じくイラン映画の『駆ける少年』を思い出します。
http://mtonosama.exblog.jp/18267949/ http://mtonosama.exblog.jp/18276180/
元気になれる映画でした。
本作はアミルホセイン・アスガリ監督の長編デビュー作です。
実はイランではこのデビュー作を作ること自体が難しく、
デビュー作を作る時にはベテラン監督のサインがないと撮影許可が出ないのだそうです。
監督は何人もの監督に脚本を送りましたが、
返ってくるのは「この映画は作らない方がいい」という返答ばかり。
唯一アボルファズル・ジャリリ監督(『少年と砂漠のカフェ』)が
アドバイザーとなってくれて漸く生まれた作品です。
さあ、若い監督の産みだしたイラン映画の新しい傑作。
いったいどんなお話でしょうか。
続きは次回まで乞うご期待でございます。
続
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☆10月10日に更新しました。いつも応援して下さってありがとうございます☆
ボーダレス
監督・脚本/アミルホセイン・アスガリ、エグゼクティブ・プロデューサー/モスファ・ソルタニ、撮影/アシュカン・アシュカニ
出演
アリレザ・バレディ、ゼイナブ・ナセルポァ、アラシュ・メフラバン、アルサラーン・アリプォリアン
10月17日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2014年、イラン、102分、配給/フルモテルモ、http://border-less-2015.com/