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殿様の試写室

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ボーダレス
ぼくの船の国境線
-1-
Bedone Marz
Borderless

ボーダレス ぼくの船の国境線 -1- Bedone Marz_f0165567_650262.jpg

© Mojtaba Amini


昔、人間は天に近づこうと高い高いバベルの塔を作りました。
その頃、人間はひとつの言葉を話し、みな理解し合うことができていたのだそうです。

天上の高みからそれを見ていた神は人間の小賢しさに怒り、
塔を壊し、ひとつの言葉で通じあっていた人々の言葉をバラバラにし、
通じ合えないようにしてしまいました。

昔の人々がそんな大それたことさえしなければ、
神様も癇を立てることはなかったのでしょうね(でも、神様って怒り過ぎ)。

私たちも苦労して外国語を学ぶ必要はなかったのに、
あ~あ
と、いまさら文句をいっても仕方ないですが。

こんな古い話を持ち出したのは、
本作『ボーダレス ぼくの船の国境線』には
一艘の廃船の中でたまたま一緒に過ごすことになった
言葉が通じない3人の人物が登場するからです。
それぞれがペルシャ語、アラビア語、英語を話すのですが、
3人が3人とも自分の言葉しか話せないし、理解することができません。

この3人に限らず、みんなが1つの言葉で意思を通じあえたら
どんなに楽で平和だったろうなぁと思います。
本当に神様って癇癪持ちなんだから。

本作はイランの新鋭アミルホセイン・アスガリ監督の作品です。

アミルホセイン・アスガリ監督
1978年テヘラン生まれ。演劇界でキャリアをスタートさせる。
現代演劇を専攻後、映画・TV界に入り、50本以上の映画やシリーズで助監督を務める。
“Maybe Another Time”で初めて短編映画を手掛けた後、本作で長編デビューした。
東京国際映画祭でプレミア上映され、大きな反響を呼んだ。

ボーダレス ぼくの船の国境線 -1- Bedone Marz_f0165567_6523840.jpg

監督にとってボーダレス=国境がない、ということは
夢であり、希望なのだそうです。

国境があるから戦争が起きる。
本来、人と人の間には壁はなく、
人々の心が通じ合えば国境なんかなくてもいい・・・
イラン・イラク戦争世代である監督はそう信じています。

イランといえば現状への不満や批判を、
子どもを通して描いた名作が多いのですが、
本作もそんな作品のひとつです。

主人公は一艘の廃船に住む少年。
イラン・イラクの国境の河に打ち棄てられた船に暮らし、
魚や貝を獲ってたった一人で生活しています。

廃船に一人で暮らす少年といえば同じくイラン映画の『駆ける少年』を思い出します。
http://mtonosama.exblog.jp/18267949/ http://mtonosama.exblog.jp/18276180/
元気になれる映画でした。

本作はアミルホセイン・アスガリ監督の長編デビュー作です。
実はイランではこのデビュー作を作ること自体が難しく、
デビュー作を作る時にはベテラン監督のサインがないと撮影許可が出ないのだそうです。
監督は何人もの監督に脚本を送りましたが、
返ってくるのは「この映画は作らない方がいい」という返答ばかり。
唯一アボルファズル・ジャリリ監督(『少年と砂漠のカフェ』)が
アドバイザーとなってくれて漸く生まれた作品です。

さあ、若い監督の産みだしたイラン映画の新しい傑作。
いったいどんなお話でしょうか。
続きは次回まで乞うご期待でございます。



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ボーダレス
監督・脚本/アミルホセイン・アスガリ、エグゼクティブ・プロデューサー/モスファ・ソルタニ、撮影/アシュカン・アシュカニ
出演
アリレザ・バレディ、ゼイナブ・ナセルポァ、アラシュ・メフラバン、アルサラーン・アリプォリアン
10月17日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2014年、イラン、102分、配給/フルモテルモ、http://border-less-2015.com/

# by Mtonosama | 2015-10-10 06:58 | 映画 | Comments(6)

真珠のボタン
El Botón de Nácar

真珠のボタン El Botón de Nácar_f0165567_661155.jpg

(C)Atacama Productions, Valdivia Film, Mediapro, France 3 Cinema – 2015


前回、当試写室で上映した『光のノスタルジア』と同じく
パトリシオ・グスマン監督の作品です。
『真珠のボタン』。
これもまた食指をそそるタイトルですね。

監督自身2部作と考えるこの2作品。
『光のノスタルジア』の舞台がチリ最北部で
本作の舞台は最南端西パタゴニアです。

全長4300キロにも及ぶチリの海岸線の一番南にある西パタゴニア。
無数の島や小島、岩礁、フィヨルドから成る世界最大の群島です。
ここだけで海岸線は7万4000キロもあるというのですから
その形状は想像に難くありません。
いまだ人跡未踏の場所もあります。

真珠のボタン El Botón de Nácar_f0165567_68121.jpg

その海の底からボタンが発見されました。
その小さなボタンを通じて
映画は
政治犯として殺害された人々や
国と自由を奪われたパタゴニアの先住民の声を伝えてきます。

『光のノスタルジア』が宇宙と軍事独裁政権下で死んだ政治犯をつなげたように
『真珠のボタン』は太古の海とパタゴニア先住民の悲劇を結びます。
そして、軍事政権時代に
ニ度と浮かびあがってこられないようにレールをくくりつけられて
海に沈められた政治犯たちのことも描いています。
監督自身軍事政権時代に処刑の恐怖を味わったことから、
この事実を除外することはできないのでしょう。

壮大な宇宙の営みと人間社会の残虐行為は関係ないようでありながら
結びつけられ、つなげられ、含み、含まれ、
大きな円環となっていきます。

宇宙と海洋と人間の残酷さが
巨大な哲学の中でひとつになったところを示す・・・
その構成力には意味をのむばかりです。

真珠のボタン El Botón de Nácar_f0165567_6103584.jpg

小さなものから大きなものへ
高いところから深いところへ
今まで経験したことのない世界観を観てしまいました。

軍事政権時代、鉄道のレールをくくりつけられ海中に沈められた無数の死体。
ヨーロッパ人によって連れ去られるパタゴニア先住民。
その末裔たちのインタビューを通して、
彼らが海と共に生き、優れた航海術を持つ海の民であったことが浮かび上がってきます。

ガブリエラ・パテリトという73歳の女性は
家族と共に6歳の時、数百マイルをカヌーで航海したことを語っていました。
少数民族のカウェスカル族の最後の末裔として
自分の人生と家族のことを語る彼女を観ると連綿とつながる家族の温かみを感じます。

真珠のボタン El Botón de Nácar_f0165567_6114010.jpg

ドキュメンタリーというジャンルの幅広さや深さに開眼させられた作品でした。
とはいえ、折々に点綴される優しい風景。
例えば、柔らかい陽が射しこむ埃っぽいような妙に懐かしい冬の窓辺が
深遠な宇宙や冷たい氷の海で寒くなった観客にほっこりとした温もりを感じさせます。

それはまるでガラス玉の中に無限を封じ込め
掌の上で愛でるかのような映画でした。

プレスには“叙事詩”とありました。
なるほど。
『真珠のボタン』にはオデュッセイアに劣らない叙事詩の語り手が
小さなカヌーで荒波を越える冒険譚を語ってくれましたし、
『光のノスタルジア』には宇宙からアタカマ砂漠への星々の光の冒険が語られました。
まさに叙事詩です。

この連作叙事詩、絶対に外せません。
自分もまた宇宙の一部であることを実感して
自信と誇りを取り戻せるような気がしますから。





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真珠のボタン
脚本・監督/パトリシオ・グスマン、プロデューサー/レナーテ・ザックセ(アタカマ・プロダクションズ)、撮影・カメラ/カテル・ジアン、追加撮影/パトリシオ・グスマン、デイヴィッド・ブラーヴォ、イブ・ドゥ・ぺレッティ、パトリシオ・ランフランコ、ラウル・ベアス
10月10日(土)10月10日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
フランス、チリ、スペイン、2010年、スペイン語・英語、82分、配給/アップリンクhttp://www.uplink.co.jp/nostalgiabutton/

# by Mtonosama | 2015-10-07 06:18 | 映画 | Comments(6)

光のノスタルジア
Nostalgia de la luz


光のノスタルジア Nostalgia de la luz_f0165567_5491247.jpg

(C)Atacama Productions (Francia), Blinker Filmproduktion y WDR (Alemania), Cronomedia (Chile) 2010


『光のノスタルジア』。
素敵なタイトルです。惹かれます。
最近びっくりさせられる映画が多くて困ってしまいます。

前回、当試写室で上映した『顔のないヒトラーたち』でも
知らなかった意外なドイツ史に驚かされました。

しかし、本作もすごいです。

ドキュメンタリー映画ですが、
星の視座から地球を見る映画なんです。

光のノスタルジア Nostalgia de la luz_f0165567_5543048.jpg


壮大な新星の誕生。
漆黒の宇宙に輝く星雲。
筆舌につくしがたい圧倒的な宇宙。
もう、とのの舌ったらずな言葉では言い表せませんわ。

これはもう映像ならではの世界です。

宇宙と一体化してビッグバンでメラメラと拡がる星々と共に
飛び散った視線が
南米チリのアタカマ砂漠に移ります。

そして、砂漠の砂を掘る人々をズームアップします。
そこに埋められているのはチリ独裁政権下の政治犯として殺された人々の遺体。

光のノスタルジア Nostalgia de la luz_f0165567_5505435.jpg

一国の政治的犯罪を星の視座で眺める。
こんな手法があったとは・・・
なんと壮大な!
もう究極の3Dです。
というか、観客の精神をも自由自在に操る3Dプラス1の世界!

監督はパトリシア・グスマン。
ラテン・アメリカを代表するドキュメンタリー映画作家です。

パトリシア・グスマン
1941年チリ、サンチャゴ・デ・チリ出身。
マドリッドの公立映画学校でドキュメンタリー映画を学ぶ。
多くの国際映画祭でいくつもの賞を受賞。
アジェンデ時代の政府とその崩壊を描いた三部作、全5時間のドキュメンタリー
『チリの戦い』は米誌「シネアスト」で
「世界で最も優れた10本の政治映画のうちの1本」と評された。
ピノチェトによるクーデターの後、逮捕され、
サンチャゴのナショナル・スタジアムに2週間監禁され、処刑の恐怖を味わった。
1973年にチリを出国し、キューバ、スペイン、フランスと移り住み、
多くの作品を発表し続けている。
1997年に始まったサンチャゴ・チリ国際ドキュメンタリー映画祭の
創設者であり、同映画祭の代表。

『光のノスタルジア』は2010年カンヌ国際映画祭でプレミアム上映され、
同年、ヨーロッパ映画賞最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞しました。
同時上映される『真珠のボタン』も2015年ベルリン国際映画祭で銀熊賞脚本賞を受賞。
グスマン監督はこの2作品を2部作と位置付けています。

光のノスタルジア Nostalgia de la luz_f0165567_5533598.jpg

舞台は宇宙とアタカマ砂漠。
砂漠もまた地球がただの星だった頃から変わらずにあり、
そこに拡がる世界はそれ自体宏大な宇宙のようです。

しかし、そこには2000年以上前の村の廃墟があり、
19世紀に炭鉱夫たちが置き去りにした列車が砂の中に埋もれかけています。
死体も埋まっています。

チリ北部、太平洋とアンデス山脈の間にあるアタカマ砂漠。
ここは世界中から天文学者が集まる場所です。
なぜかといえば、
世界で最も乾燥したこの地は大気の揺らぎや湿気がなく
天体観察に非常に適しているから。

砂と空のはざまにあって何万光年、何百万光年もかなたの星々を観察する人々と
その足元で独裁政権下に行方不明になった息子や夫の遺骨を探し続ける女性たち。

宇宙的な時間にとっては
極小に過ぎないかもしれない数十年の時が
それでも併存するアタカマ砂漠です。

このような視線でとらえた映画は初めて観ました。
150年生きても知らないことは多いものです。







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光のノスタルジア
監督・脚本/パトリシア・グスマン、プロデューサー/レナート・サッチス、撮影/カテル・ジアン、天文写真/ステファン・ガイザード、製作/アタカマ・プロダクションズ
10月10日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
フランス、ドイツ、チリ、2015年、スペイン語・英語、90分、配給/アップリンクhttp://www.uplink.co.jp/nostalgiabutton/

# by Mtonosama | 2015-10-04 06:03 | 映画 | Comments(6)

顔のないヒトラーたち -3-
Im Labyrinth des Schweigens


顔のないヒトラーたち -3- Im Labyrinth des Schweigens_f0165567_5142957.jpg

(C)2014 Claussen+Wobke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG


異例の3編ものとなってしまいました。
前回、トーマスにオフィスから資料を盗まれたヨハンですが・・・

ストーリー
トーマスは無断で記事を書いたお詫びにヨハンをホームパーティに誘った。
そこで交通違反の罰金を立て替えて上げたことのあるマレーネと再会。
その晩、酔いつぶれたシモンをトーマスと共に自宅まで送り届けた彼は
そこで、ものすごいものを発見する。
シモンがアウシュヴィッツから持ち帰った実名入りの親衛隊員の資料だ。

その一部を持ち帰ったヨハンはすぐさまバウアー検事総長に報告。
本格的に調査の指揮を命じられた。
膨大な文書の山を1つ1つ調べ、被害者と証言者の名前をリストアップ。
国際アウシュヴィッツ委員会事務局長ヘルマン・ラングバインの援助を受け、
ついに最初の証人を尋問する。
その証言によりヨハンはアウシュヴィッツで行われた犯罪が
いかに広範囲にわたっていたかを知ることになった。

米軍のドキュメントセンターには60万人分のSSのファイルがある。
その内アウシュヴィッツで働いていた8000人全員が容疑者だった。
ヨハンは住所から容疑者を特定するため、
ドイツ全域の電話帳を調べ始めた。
バウアー検事総長はオットー・ハラー検事をチームに加え、
秘書のエリカ・シュミットも加わった。
3人の実働メンバーで調査を続けるヨハンに、ある検事正は
「息子たちが父親に加害者だったのかと問い詰めるのか?」と詰め寄る。
顔のないヒトラーたち -3- Im Labyrinth des Schweigens_f0165567_5173084.jpg

証言を要請するため、シモンを訪れたヨハンは
彼の娘たちからメンゲレ医師が行った人体実験の話を聞く。
メンゲレこそアウシュヴィッツの象徴と考えたヨハン。
南米に逃亡中のメンゲレが帰独していることをつきとめ、
彼の父親の葬儀の場での拘束を試みる。
だが、連邦情報局の協力を得られず、後一歩というところで逃してしまう。

「メンゲレは国に守られている。彼から手をひけ」と言うバウアー検事総長。
ナチス時代、多くの罪はごく普通のドイツ人によってなされていたのだ。
その後、地道な調査と生存者の証言によって
アウシュヴィッツの元所長や親衛隊員たちが逮捕された。
しかし、誰ひとり謝罪の態度を示すものはいなかった。

ある日、ヨハンは母親から父について衝撃的な事実を告げられる……

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そして、映画は
ドイツの歴史認識を大きく変えたアウシュヴィッツ裁判の開廷で幕を閉じるのですが、
いや、ドイツ人自身が自分たちの犯罪を裁いたというところがすごいです。

当時のアデナウアー首相もあの事実に蓋をしていきたいと思っていた時代です。
上司が主人公に
「きみは自分の父の犯罪をそうやって暴き立てるのか」
と糾弾するシーンがありました。
これ重いです。

顔のないヒトラーたち -3- Im Labyrinth des Schweigens_f0165567_5212133.jpg

昔観た『ミュージック・ボックス』(‘89)という映画に同様なシーンがあり、考え込んでしまいました。
「Z」コスタ=ガヴラス監督作品。
ユダヤ人虐殺犯としての疑いをかけられたハンガリー移民の父の弁護を受け持った
女性弁護士の葛藤と、事件の裏側に潜む真実をサスペンスフルに描いたもの。
ミュージック・ボックス(オルゴール)の中から出てきた写真が衝撃的でした

自分は父を裁くことはできない、
しかし、それはホロコーストを容認することになるのだし・・・
自分なら、と思うととてもつらいです。
だから、自国の、それも、近い過去の犯罪を裁くというのは確かに非常に重い行為だと思います。

ドイツもニュルンベルグ裁判というドイツの戦争犯罪を裁いた
国際軍事裁判を経験しています。
東京裁判と並び、二大国際軍事裁判の1つです。

他国によって裁かれるのみではなく、自分たち自身の手で自らを裁くこと。
謝り続け、過去を決して忘れないこと。
このアウシュヴィッツ裁判がなければ、今ドイツはどんな国になっていたことでしょう。

しかし、こんな重い映画なのに、痛快に楽しませてくれるところもいいです。
アレクサンダー・フェーリング、男をあげました。





長い紹介におつきあいいただきありがとうございました。今日もポチッとしていただければ嬉しいです♪
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顔のないヒトラーたち
監督/ジュリオ・リッチャレッリ、脚本/エリザベト・バルテル、ジュリオ・リッチャレッリ、製作/ウリ・プッツ、サビーヌ・ランビ、ヤコブ・クラウセン、撮影/マルティン・ランガー、ロマン・オーシン
出演
アレクサンダー・フェーリング/ヨハン・ラドマン、アンドレ・シマンスキ/トーマス・グニルカ、フリーデリーケ・ベヒト/マレーネ・ウォンドラック、ヨハネス・クリシュ/シモン・キルシュ、ハンシ・ヨクマン/エリカ・シュミット、ヨハン・フォン・ビューロー/オットー・ハラー、ロベルト・フンガー・ビューラー/ウォルター・フリードベルク、ルーカス・ミコ/ヘルマン・ラングバイン、ゲルト・フォス/フリッツ・バウアー
10月3日ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸他全国ロードショー
2014年、ドイツ、123分、配給/アット エンタテインメント、字幕/安本煕生、http://kaononai.com/

# by Mtonosama | 2015-10-02 05:37 | 映画 | Comments(10)

顔のないヒトラーたち -2-
Im Labyrinth des Schweigens

顔のないヒトラーたち -2- Im Labyrinth des Schweigens_f0165567_4432467.jpg

(C)2014 Claussen+Wobke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG


2015年1月、ナチス虐殺被害者の追悼式典で、メルケル首相は語りました。

「ナチスはユダヤ人への虐殺によって人間の文明を否定しました。
その象徴がアウシュヴィッツです。
私たちドイツ人は恥の気持でいっぱいです。
何百万人もの人々を殺害した犯罪を見て見ぬふりをしたのはドイツ人自身だったからです。
私たちドイツ人は過去を忘れてはいけません。
数百万人の犠牲者のために過去を記憶していく責任があります」

安倍さん、聞いてましたか?
記憶するためには学ばなければなりませんのよ。

あ、すいません。
つい腹が立って。

顔のないヒトラーたち -2- Im Labyrinth des Schweigens_f0165567_4465121.jpg

前回は、一人のジャーナリストが、アウシュヴィッツ収容所・元親衛隊員が
学校教師をしていることを知ったというところまでお話しました。

その後、若き検事ヨハンが様々な圧力や苦悩を抱えながら
アウシュヴィッツで犯したナチスの犯罪の詳細を
生存者の証言や実証を基に明らかにして行きます。
実に感動的であります。

主役の若き検事ヨハンを演ずるのは
『ゲーテの恋』でゲーテを演じたドイツの誇るイケメン俳優
http://mtonosama.exblog.jp/16661792/ http://mtonosama.exblog.jp/16675792/
アレクサンダー・フェーリング。
若き、というところが重要です。
もし、とのの好きなモーリッツ・ブライプトロイなんかだと
ちょっと歳がいきすぎちゃいますからね。

このアレクサンダーくん、
1981年生まれですからブライプトロイより10歳も若い34歳。
若いだけでなくお顔立ちがとても端正でありながら華やかでございましょ?
この華やかさと美しさが
暗い時代のドイツの暗い部分を深刻なだけではなく、
ハラハラドキドキ夢中にさせて、ラストには感動の涙が頬を伝う映画にしあげています。

顔のないヒトラーたち -2- Im Labyrinth des Schweigens_f0165567_4495489.jpg


まあ、まずはストーリーにいってみましょう。

ストーリー
1958年、フランクフルト。戦後13年。ドイツは経済復興の真っただ中。
人々もあの忌まわしい戦争を忘れつつあった。

新米の検事ヨハン・ラドマン。
意欲も野心も満々だが、担当する裁判は交通違反ばかり。
ところが、交通違反で出廷した女性マレーネ・ウォンドラックに一目惚れ。
彼女の罰金額の一部を法廷で立て替えた。

ジャーナリストのトーマス・グニルカ。
彼は友人のシモン――戦争中アウシュヴィッツに収容されていたユダヤ人――
から、元親衛隊(SS)にいた男が違法に教師をしていることを聞き、
検察庁のロビーでその苦情を申し立てた。
だが、検察官はアウシュヴィッツのことを知らず、トーマスの話に耳を傾ける者もいない。
ただ一人ヨハンは彼の話に関心を示し、調査を始めた。

調査の結果、その男がアウシュヴィッツの親衛隊であったことが確認され、
ヨハンは検察官の定例会議で報告。検事正はしぶしぶ文部省への確認を約束。

しかし、トーマスはヨハンを信じなかった。
ヨハンも他の同世代の人々と同じく”アウシュヴィッツ“の実態を知らないことに
「史上最悪の残虐行為は忘れ去られてしまった」と嘆くのだった。

トーマスはヨハンのオフィスから書類を盗み出し、
ルントシャウ紙に「闇に葬られたスキャンダル」と題した記事を発表する。
その責任を問われ、検事総長フリッツ・バウアーに呼び出されたヨハン。
状況を説明する一方で、
バウアー検事総長から政府機関内には未だにナチ党員がいること。
確かに殺人が行われたという証拠がなくては、
戦争犯罪者を裁くことはできないのだと知らされる・・・

まだまだストーリーは続きます。
しかし、当試写室の容量不足のため、異例ではありますが、
またも続きとさせていただきます。

次回いよいよ最終編。
乞うご期待でございます。



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☆9月30日に更新しました。明日から10月ですね。なんと1年の経つのは早いことでしょう☆

顔のないヒトラーたち
監督/ジュリオ・リッチャレッリ、脚本/エリザベト・バルテル、ジュリオ・リッチャレッリ、製作/ウリ・プッツ、サビーヌ・ランビ、ヤコブ・クラウセン、撮影/マルティン・ランガー、ロマン・オーシン
出演
アレクサンダー・フェーリング/ヨハン・ラドマン、アンドレ・シマンスキ/トーマス・グニルカ、フリーデリーケ・ベヒト/マレーネ・ウォンドラック、ヨハネス・クリシュ/シモン・キルシュ、ハンシ・ヨクマン/エリカ・シュミット、ヨハン・フォン・ビューロー/オットー・ハラー、ロベルト・フンガー・ビューラー/ウォルター・フリードベルク、ルーカス・ミコ/ヘルマン・ラングバイン、ゲルト・フォス/フリッツ・バウアー
10月3日ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸他全国ロードショー
2014年、ドイツ、123分、配給/アット エンタテインメント、字幕/安本煕生、http://kaononai.com/

# by Mtonosama | 2015-09-30 05:02 | 映画 | Comments(2)

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