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ぼくたちのムッシュ・ラザール
-2-
Monsieur Lazhar

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micro_scope inc. (C) 2011 Tous droits reserves

この映画のタイトルを観てフランス映画と思ってしまったのは、
もちろんタイトルがフランス語だからなのですが、
とのが観たフランス映画って案外学校ものが多いんです。
昨年6月、当試写室で上映した幼稚園児が哲学するドキュメンタリー「ちいさな哲学者たち」
http://mtonosama.exblog.jp/16126125/ http://mtonosama.exblog.jp/16140994/
もそうでしたし、一昨年の4月には「パリ20区、僕たちのクラス」
http://mtonosama.exblog.jp/m2010-04-01/ http://mtonosama.exblog.jp/m2010-04-01/
を上映しています。
あとは自分の村でとれた無農薬野菜を小学校の給食に出すなんていう
ドキュメンタリー映画も上映したような記憶が。
まだあった。田舎の小学校の先生と子どもたちの1年を追った素朴なドキュメンタリーも
印象に残ります。150歳にもなると恋愛映画より子どもを描いた作品が気になるようです。

あ、また横道にそれてしまいました。
本作はカナダ映画です。でも、ケベック州と言うフランス語圏だからタイトルも言葉もフランス語というだけ。

前置きが長くなりました。


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ストーリー
モントリオールの小学校。
いつもと変わらない風景の中で、子どもたちが笑いさざめきながら雪の校庭で教室に入るまでのひとときを過ごしています。
その日、クラスの牛乳当番だった男児シモンは皆より一足早く校舎内に入り、
牛乳の準備にとりかかりました。クラス全員の牛乳をカゴに入れ、
教室のドアを開けようとしましたが、中から鍵がかかっています。

不思議に思い、教室内を覗きこむと目に飛び込んできたのは
首を吊っているマルティーヌ先生の姿でした。
シモンの報告を聞いた教師たちは、授業開始のベルで校内になだれこもうとする子どもたちを
押しとどめたのですが――
異変に気づいた女児アリスも<それ>を見てしまいました。

マルティーヌ先生の自死から1週間。
学校は子どもたちのケア、保護者への説明、そして、マルティーヌ先生に代わる教員の手配に追われていました。

そこへ現れたのがアルジェリアからの移民バシ―ル・ラザール。
「母国で19年間の教師経験があり、子どもたちの助けになりたい」とラザール氏は校長に直談判。
校長は他に選択肢もないまま、正直そうなラザール氏を担任として採用したのでした。

「バシールの意味は『良い知らせ』。ラザールの意味は『幸運』です」
こんな自己紹介からラザール先生と子どもたちとの新しい学校生活が始まります。
優しく穏やかなラザール先生は子どもたちともすっかり打ち解けました。
でも、その授業スタイルも先生の教えるフランス語も古臭く、
教材の選択も小学生にふさわしいものではありません。

ある日ラザール氏は弁護士と一緒に裁判所の審議官の前に座っていました。
実はラザール氏は正式な移民ではありません。
母国アルジェリアで教職に就いていた妻は、国の政策を批判したため、娘達と共に殺され、
唯一生きのびたラザール氏だけがこの地に難民として逃れていたのでした。
現在、彼は難民申請中の身であり、政治難民として受け入れられるかどうかもまだわからない身の上。
教師として採用されはしましたが、教職経験などなかったのです。

学校でダンスパーティがあった日。
いつもシモンにからかわれているマーティンが怒って、シモンの持っていた写真を奪い、ケンカになりました。
2人の仲裁に入ったラザール先生はその写真を見て衝撃を受けます。

写真にはマルティーヌ先生が写っており、その背中にはマジックインクで羽が、
首にはロープが描かれていたからです。
マルティーヌ先生の死はシモンの心に深い影を落としていました。
実はシモンとマルティーヌ先生の間にはちょっとした事件があったのです。

それは落ち込んでいたシモンをマルティーヌ先生がハグしようとし、
それを拒んだシモンが「先生にキスされた」と言いふらしたこと――
そのことが大きな問題になったため、
それ以降、学校側はいかなるときにも教師が生徒に触れることを禁じ、今に至っています。

授業中、マルティーヌ先生の話になりました。
意を決したラザール先生は子どもたちに問いかけます。
「マルティーヌ先生について話したい人はいる?」
するとアリスがシモンを指差します。
いきなり指名され動揺しながらもシモンは話し始めました。
「キスは嘘だ。でも、ハグもしてほしくなかった――」
シモンは自分の言葉のためにマルティーヌ先生が死を選んだのではないかと、
ずっと自分を責め続けていたのです。
ラザール先生は子どもたちに静かな声で語りかけます。

とうとうラザール先生が教員の資格どころか、
カナダの永住権さえ持っていないことが明らかになる日が来てしまいました……


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波風を立てないように、と気を配るばかりに、
教師と生徒の間のちょっとした触れ合いまでも禁止してしまう画一的な事無かれ主義。
学校はしつけなど教えず、勉強さえしっかりやらせてくれればいいという保護者。
校長はじめ大半が女性教師の小学校。

日本ともどこか通じるところがある光景です。
人権も民主主義もしっかり根付いている先進国カナダへ
難民申請しているアルジェリア人のラザール先生は母国で妻も子もテロで失っています。

人権も国としてのインフラも、まだまだカナダの後塵を拝しているアルジェリア難民のラザール先生。
スマートで清潔で先進的な国の大人たちが失いかけている誠実さ、真剣さを
誰よりも強く持っているのもラザール先生なんですね。

教室で自死を選んだマルティーヌ先生の本当の気持ちはだれにもわかりませんが、
子どもたちにとっては触れてはならない事実として覆い隠されることが果たして良いことなのか。
ラザール先生はそのことを誰よりも真剣に考え、子どもたちにも考えさせました。

不器用に、無骨に、そして勇敢に、死から眼を逸らさないラザール先生は
都会に吹き抜ける異文化の風というべきでしょうか。
それとも、国境を越えた真摯な哲学者とでもいうべきでしょうか。

ラザール先生を演じた、自身も亡命者であるという俳優フェラグの演技が光りました。





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☆7月18日に更新しました。いつも応援してくださり、ありがとうございます☆

ぼくたちのムッシュ・ラザール
監督・脚本/フィリップ・ファラルドー、原作/エヴリン・ド・ラ・シュヌリエール、製作/リュック・デリー、キム・マックルー、撮影/ロナルド・ブランテ(C.S.C)、編集/ステファーヌ・ラフルール、美術/エマニュエル・フレシェット、音楽/マルティーヌ・レオン
出演
フェラグ/ラザール先生、ソフィー・ネリッセ/アリス、エミリアン・ネロン/シモン、ダニエル・プルール/ヴァイアンクール校長、ブリジット・プパール/クレール先生、ルイ・シャンパーヌ/清掃員、ジュール・フィリップ/ガストン先生、フランシーヌ・ルール/デュマ先生、ソフィー・サンカルティエ/オードリー先生、エヴリン・ド・ラ・シュヌリエーヌ/アリスの母、マリー・シャルルボワ/弁護人、ニコ・ラガルド/心理カウンセラー
7月14日(土)シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー
2011年、カナダ、フランス語、95分、特別協力/ケベック州政府在日事務所、後援/カナダ大使館、提供/ニューセレクト、ザジフィルムズ、配給/ザジフィルムズ、アルバトロス・フィルム、文部科学省特別選定(青年・成人向け)
http://www.lazhar-movie.com/

by Mtonosama | 2012-07-18 06:46 | 映画 | Comments(11)
ぼくたちのムッシュ・ラザール
-1-
Monsieur Lazhar

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micro_scope inc. (C) 2011 Tous droits reserves

「ぼくたちのムッシュ・ラザール」(Monsieur Lazhar)。
オリジナルタイトルはフランス語ですが、フランス映画ではありません。

カナダのケベック州、フランス語を公用語とする州ですが、
そのケベック州最大の都市モントリオールの小学校を舞台にした映画が
「ぼくたちのムッシュ・ラザール」。
モントリオールはフランス語圏の都市としてはパリに次いで第2位の人口を誇り、
フランス語と英語のバイリンガル率は57%なのだとか。

ムッシュ(monsieur)
例のジュブジュブと囁くような感じでムッシュ(Monsieur)と話しているのを聞くと
ゾクッとするのはとのだけでしょうか。
あ、ここでのゾクッは良い意味ですが。

さあ、ムッシュ・ラザール――
いったいどんな人物なのでしょうね。

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ある冬の朝、モントリオールの小学校の教室で担任の女教師が首を吊って死んでいるのを、
牛乳当番の男児が発見したのが物語の始まりです。
生徒たちが一日の大半を過ごす教室で担任教師が自殺するなどあってはならないことです。
が、それはひとまず脇に置いておきましょう。

発見者の男児はもちろん、生徒たちは大きなショックを受け、
学校も生徒たちの心のケアや後任の先生探しに追われます。
しかし、急なことなので後任探しもなかなか難しい。
そこへ現れたのがムッシュ・ラザールという訳です。

ラザール氏はアルジェリア移民の中年男性。
「教師自殺」の新聞記事を読んで応募してきたという誠実そうな人物です。

さっそく代用教員として採用されましたが、教え方も授業内容もどこか時代遅れ。
生徒たちも亡くなった担任教師との違いにとまどいながらも、
いつも真剣なラザール先生になついていくというお話。

でも、これだと普通の学園ドラマですよね。
ま、当然それで終わる訳はありません。
そうでなければアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、
カナダ・アカデミー賞主要6部門を独占するなんてことはない筈です。

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原作は、女優としても活躍するエヴリン・ド・ラ・シュヌリエールの戯曲。
彼女は本作にも児童の母親役として登場していますよ。

彼女の芝居を観た瞬間に、この映画をつくろうと思ったという監督は
ケベック州出身のフィリップ・ファラルドー。
本作が映画4作目となります。
原作となった舞台劇“Bashir Lazhar”を観ながら、
映画を想像し、教室や芝居には出てこない子どもたちを想い浮かべたというのですから、
その思いの深さは相当なもの。

実は、主人公のラザール先生は、この事件で大変なショックを負った子どもたちと同じくらい、
深い心の傷を負い、複雑な事情を持った人なのですが、その辺は追々と――

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しかし、この俳優さんの悲しみを秘めた視線とおおらかに子どもを包む演技には素晴らしいものがあります。
また、10~11歳という少しずつ大人になっていく子どもたちの素直な演技が良かったです。
まだこまっちゃくれてはおらず、かといって騒々しいだけの子どもでもなく、
知らず知らず微笑んでしまうくらい、可愛いかった。
あれ、とのってもしかしたら子ども好き?150歳になると人間もいろいろ変ってくるものです。
本作を観て、カナダの子どもたちって良い子なんだなぁって思ってしまいました。

さあ、どんなお話なんでしょうね。次回まで、乞うご期待であります。



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☆7月15日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

ぼくたちのムッシュ・ラザール
監督・脚本/フィリップ・ファラルドー、原作/エヴリン・ド・ラ・シュヌリエール、製作/リュック・デリー、キム・マックルー、撮影/ロナルド・ブランテ(C.S.C)、編集/ステファーヌ・ラフルール、美術/エマニュエル・フレシェット、音楽/マルティーヌ・レオン
出演
フェラグ/ラザール先生、ソフィー・ネリッセ/アリス、エミリアン・ネロン/シモン、ダニエル・プルール/ヴァイアンクール校長、ブリジット・プパール/クレール先生、ルイ・シャンパーヌ/清掃員、ジュール・フィリップ/ガストン先生、フランシーヌ・ルール/デュマ先生、ソフィー・サンカルティエ/オードリー先生、エヴリン・ド・ラ・シュヌリエーヌ/アリスの母、マリー・シャルルボワ/弁護人、ニコ・ラガルド/心理カウンセラー
7月14日(土)シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー
2011年、カナダ、フランス語、95分、特別協力/ケベック州政府在日事務所、後援/カナダ大使館、提供/ニューセレクト、ザジフィルムズ、配給/ザジフィルムズ、アルバトロス・フィルム、文部科学省特別選定(青年・成人向け)
http://www.lazhar-movie.com/

by Mtonosama | 2012-07-15 06:20 | 映画 | Comments(4)