Shi(詩)
Poetry

(C)2010 UniKorea Culture & Art Investment Co. Ltd. and PINEHOUSE FILM. Allrights reserved.
イ・チャンドン監督は本作「ポエトリー アグネスの詩」についてこう語っています。
詩が死に行く時代。
その喪失を嘆く者。死んで当然だというものがいる。
それでも人々は詩を書き、読み続ける。
では、暗澹たる未来が前にあるとき、
詩を書くことにどういう意味があるのか。
私はそれを観客に問いかけたい。
そして、詩についてはこう語っています。
人生の中に潜んでいる美を追求しようとする態度そのものを“詩”と呼んでいいと私は思っています。
さあ、いったいどんなストーリーなのでしょうか。

ストーリー
川遊びをする子どもたち。陽射しに煌めく川面をゆっくりと何かが流れてきます。
中学の制服を身につけた少女の物言わぬ身体でした。
釜山で働く娘の代わりに中学3年のジョンウクを育てている66歳のミジャは、
腕の痛みで受診した病院で、物忘れの方が心配だから精密検査を受けることを勧められます。
ミジャが携帯電話で娘と楽しげに話しながら病院から出た時、
救急車の前で1人の女性が放心したように立っていました。
川を流れてきた女子中学生の母親でした。
ミジャが詩作教室の広告に目をとめたのはその帰り道のこと。
帰宅後、孫のジョンウクに自殺した少女のことを尋ねますが、「知らない」と素っ気ない返事。
子どもの頃、「将来は詩人になる」と言われたことを思い出したミジャ。
彼女は詩作教室を受講しようと決心します。
教室で、講師は語ります。
「詩は見て書くものです。人生で一番大事なのは見ること。世界を見ることが大事です」
この言葉に従って、リンゴを眺め、公園の樹木をみつめ、心に浮かぶことを手帳に書き留めるミジャ。
そんなとき、孫の友人の父親がミジャに連絡してきました。
そして、彼女は孫たち仲良し6人グループの保護者の集まりに連れていかれます。
そこで知らされた衝撃の事実。
自殺した少女は数ヶ月前から彼らから性的な暴行を受けていたというのです。
慰謝料を支払い、穏便にことを収めようとする父親たち。
しかし、ミジャにはそんなお金はありません。
自殺した少女はアグネスと言う洗礼名を持つクリスチャンでした。
彼女の慰霊ミサに出席したミジャは教会の入口に置かれていたアグネスの写真を持ち去ります。
孫をしかることも、泣きわめくこともせず、沈黙を保っていたミジャですが、
以前と変わらず自堕落な生活を続ける孫に詰問します。孫は相変わらず無反応なまま。
いつしかアグネスの足跡を辿るようになるミジャは…
最近物忘れが激しく、医者からアルツハイマーの検査を受けるように言われたミジャ。
介護ヘルパーをする老人のたっての願いを聞き入れ、身体を交えるミジャ。
詩の集まりを通じて出会った1人の刑事との友情にも似た心の通い合い。
思いもかけない出会いやできごとを通じて、静かにどこかへ向かうミジャの日常。
66歳の主人公ミジャの人生と詩の創作。
アルツハイマーのためゆっくりと言葉を失いつつあるのに、詩など書けるのか。
詩を描いた映画?いったい何が面白いのか。
と、憎々しくつっこみながら観始めたのですが、なぜかストンと胸におさまっていきました。
そして、ミジャの決断に感動までしていました。

つらい現実に真正面からぶつかっても痛いだけ。
いずれにせよ生きていかねばならないのなら、ことさらに声を荒げず、
現実の人生を静かにみつめ、川が流れるように、木の葉が風に揺らされるように、
するりと穏やかに生きていけばいいのでしょう。
それでも筋を通したミジャにまたまたただならぬものを感じてしまいました。
この映画そのものが新しい文体を獲得した詩なのかもしれません。
終
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ポエトリー アグネスの詩
脚本・監督/イ・チャンドン、プロデューサー/イ・ジュンドン、エグゼクティヴ・プロデューサー/ヨム・テスン、チョイ・ソンミン、撮影/キム・ヒョンソク
出演
ユン・ジョンヒ/ミジャ、イ・デビッド/ジョンウク、キム・ヒラ/カン老人、アン・ネサン/ギボムの父、パク・ミョンシン/ヒジンの母、キム・ヨンテク/詩作教室講師キム・ヨンタク
2月11日(土)銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー
2010年、139分、韓国、韓国語、カラー、日本語版字幕/根本理恵、提供・配給/シグロ、キノアイ・ジャパン、配給協力/クレストインターナショナル、http://poetry-shi.jp/
Shi(詩)
Poetry

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この韓国映画の原題はShi(詩)、英題はPoetryです。
詩ですか・・・・・
皆さんは詩という言葉から何を連想しますか?
とのは何か気恥ずかしさを感じます。「わたし、詩を書いてるの」とは公言しにくいです。
書くのなら、こっそりと深夜にノートに書きつけるし。
主人公は少女チックなファッションの60代後半の女性、
彼女が若づくりをして「詩を創りたい」などと呟くと、いよいよ気恥ずかしさが募ります。
詩って、若気の至りというか、溢れ来る情念を逃す溜め池というか、
ま、その辺の特質は散文と同じでしょうが、なんかちょっと違う文学ジャンルという気がしますよね。
本作のようにタイトルが「Shi」(詩)
(韓国語と日本語は同じ発音なんだそうです。韓国語を勉強しているleoleoさん、ありがとうございました)、
そして、主人公は町のカルチャーセンターで詩の講座を受ける60代女性というと
さらにまた引いてしまいました。
イ・チャンドン監督、なにを言いたいのですか?
が、しかし、
大きな偏見でした。反省しています。

まず、この女優さんがただものじゃありませんでした。
そりゃ、見たところ、化粧では隠しきれないシワはありますし、ほうれい線も目立っていますよ。
66歳ですから、そんなことは仕方ないです。ええ、シワもほうれい線もいいんです。
介護ヘルパーをしながら中学生の孫息子と暮らし、息子を預けて働きに出ている娘からは
時々連絡が来るだけの静かな毎日を送る主人公ミジャ。
貧しい暮らしの中で、多少、乙女チックながら、おしゃれにも気を配っています。
少し夢見がちな部分もありますし、ちょっと周囲から浮いているかもしれません。
ま、ほんの少し変わっているけれど、普通にお友達になれる女性です。
そんな彼女が何かを表現してみたくなったと思ってください。
そして、その過程で意外なできごとに遭遇し、
その何かがきりきりと詩へと絞り込まれていくあたりがこの映画のただならぬところなんです。
主人公ミジャはあくが強すぎてもいけないし、凡庸であってもいけない。
結構難しい役どころだと思うんです。
それを演じたのがユン・ジョンヒ。
60年代後半から70年代半ばにかけて韓国映画界で絶大な人気を誇った女優。
それも、45年間で330本の映画に出演し、内325本で主演を果たした大女優です。
現在はフランスに在住し、本作は16年ぶりの映画出演。
なるほど。ただものじゃない存在感でした。

監督は小説家でもあったイ・チャンドン。1954年大邱出身で81年から87年までは教師をしていました。83年に小説家デビューし、93年には映画界に進出。97年に「グリーンフィシュ」で監督デビュー。2009年には名子役キム・セロンを世に出した「冬の小鳥」(ウニー・ルコント監督)をプロデュースしています。http://mtonosama.exblog.jp/14398672/、http://mtonosama.exblog.jp/14418151/
本作「ポエトリー アグネスの詩」では第63回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しています。
主人公は60代後半の女性、テーマは詩。
そして・・・・・
えーい、言ってしまいましょう。
韓国で数年前に起きた10代の少年のたちの集団暴行事件。
1人の女子中学生に対して少年たちが数カ月にわたって性的暴力を加えていた事件が
この映画の下敷きになっているのです。
この事件がミジャの詩とどう関わっていくのでしょうか。
続きは次回までお待ちくださいませ。
続
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ポエトリー アグネスの詩
脚本・監督/イ・チャンドン、プロデューサー/イ・ジュンドン、エグゼクティヴ・プロデューサー/ヨム・テスン、チョイ・ソンミン、撮影/キム・ヒョンソク
出演
ユン・ジョンヒ/ミジャ、イ・デビッド/ジョンウク、キム・ヒラ/カン老人、アン・ネサン/ギボムの父、パク・ミョンシン/ヒジンの母、キム・ヨンテク/詩作教室講師キム・ヨンタク
2月11日(土)銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー
2010年、139分、韓国、韓国語、カラー、日本語版字幕/根本理恵、提供・配給/シグロ、キノアイ・ジャパン、配給協力/クレストインターナショナル、http://poetry-shi.jp/