
©「凶悪」製作委員会
実際に起こった事件であり、それほど昔の話でもない事件。
というか、事件が発覚してから10年も経っていません。
こんな最近のできごとを映画にするというのもすごいですね。
家族の崩壊、借金、高齢者からの土地収奪・・・・・
こういう出来事から目をそらしていてはいけない、
と正義感だけで描く映画であってほしくはありません。
第一、この長引く不況の中で、実際に、家を失ったり、会社が倒産したり、
一家がバラバラになってしまった家庭はそこらじゅうにある筈ですから、
今さら正義なんて言ってほしくないというのが正直なところです。
さあ、白石監督の腕のみせどころです。
監督は「映画を武器にして闘う」という若松孝二の遺志を受け継ぐと言っていますが、
この強烈すぎるノンフィクションはいったいどんな武器になったでしょうか。
ストーリー
雑誌「明潮24」に東京拘置所に収監中の死刑囚・須藤から手紙が届く。
記者の藤井は上司から須藤に面会して話を聞いて来るように命じられる。
藤井が須藤から聞かされたのは、警察も知らない須藤の余罪。
3件の殺人事件とその首謀者である「先生」と呼ばれる男・木村の存在だった。
木村を追いつめたいので記事にして欲しいという須藤の告白に、
当初は半信半疑だった藤井も取材を進める内、須藤の告発に信憑性があることを知る。
そして、取り憑かれたように取材に没頭して行くのだった……

歳をとったら生きていなくてもいいんですよ、
とばかりに無造作に積み重ねられる殺人事件。
殺人の原動力は金。
高齢者問題や家族の崩壊、土地転がしなど、
転げ落ちる者はとことん落ちて行き、儲けるものは限度もモラルもなく儲けまくる――
「不況、不況というけど、俺たちはこの不況のおかげで儲けさせてもらっているんだよ」
とうそぶく木村。

そんな木村を追いつめながら、何かに憑かれたようになっていく藤井。
認知症の母を妻に押しつけ、狂気にも似た執念にとりつかれていきます。
その妻もまた追いつめられながら、姑に暴力を振るうようになっていく――
救いはなく、狂気と暴力に満ちています。
新聞やニュースの記事のさらに奥の厳しい状況をつきつけてくる映画です。
とびっきりの凶悪人物を描きながら、それに対する正義もまた狂気を帯びている――
複雑な現代社会の持つ薄気味悪さを見事に描き出しています。
いやぁ、確かに後味が悪い映画です。でも、なぜか魅かれる作品であります。
終
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☆9月15日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆
凶悪
監督/白石和彌、脚本/高橋泉、白石和彌、原作/新潮45編集部編『凶悪―ある死刑囚の告発―』(新潮文庫刊)、製作/鳥羽乾二郎、十二村幹男、撮影/今井孝博
出演
山田孝之/藤井修一、ピエール瀧/須藤純次、リリー・フランキー/木村孝雄、池脇千鶴/藤井洋子
9月21日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2013年、日本、128分、http://www.kyouaku.com/

©「凶悪」製作委員会
いやぁ、怖い映画を観てしまいました。
ホラーではないのに怖かった映画としてコーエン兄弟監督の『ノーカントリー』(‘07)があります。
ハビエル・バルデムが演じるアントン・シダーの殺人シーンが
「もー、やめてください!」と叫びたくなるほど怖かったのですが、
本作でも「もー、充分です。わかりました。わかったから、やめてぇー!」と
心中で絶叫していました。
握りしめていたハンカチが恐怖と興奮で揉みしだかれ、グシャグシャ。
これが実話だというのですから、絶望的な気持になります。
あ、いけない。
最初っからネタばれしてしまいましたね。

もうお読みになった方もいらっしゃるかとも存じますが、
本作はベストセラー・ノンフィクション『凶悪 ―ある死刑囚の告発―』(新潮45編集部編、新潮文庫刊)
の映画化作品であります。
監督は白石和彌。未だ30代ながら、故・若松孝二監督に師事した社会派監督。
本作では一見平和な社会や家庭に内包される借金地獄、老人問題を鋭く抉りだしています。
「長引く不況の中で起こるべくして起こった事件」と語る監督です。
白石和彌監督
1974年12月17日生まれ。北海道出身。1995年、中村幻二監督主催の映像塾に参加。
以後、若松孝二監督に師事し、活動。若松監督『明日なき街角』(‘97)、『完全なる飼育 赤い殺意』(‘04)、『17歳の風景 少年は何を観たのか』(‘05)などの作品に助監督として参加し、行定勲監督、犬童一心監督などの作品にも参加。初の監督・脚本作品『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(‘10)を経て、本作を監督する。師である故・若松孝二監督は「映画を武器にして闘う」と語っていたが、白石監督も師の意志を受け継ぎ、自分の思いを映画にして訴え、闘っていきたいと言う。
2005年3月
「新潮45」の雑誌記者に東京拘置所に収監中の死刑囚から手紙が届き、
記者による接見、調査が始まる
同年10月
その調査結果レポートを茨城県警察本部・組織犯罪対策課に提出。
同年10月17日
死刑囚である暴力団組長が弁護士を通して茨城県警へ上申書を提出し、受理される。
同日7時、NHKのニュースで報道。
同年10月18日
「新潮45」11月号発売。
『誰も知らない「3つの殺人」― 首謀者は塀の外にいる!「凶悪殺人犯」の驚愕告発』。
テレビ、新聞各紙でも報道。同日中に「首謀者は不動産ブローカー」と続報。
同年11月1日
茨城県警が、東京拘置所で最初の事情聴取を行う。
同年11月18日
「新潮45」12月号発売。
『続・誰も知らない「3つの殺人」―まだあった!「第4、第5の殺人計画」』
同年12月9日
茨城県警が首謀者の不動産ブローカーを強要容疑で逮捕。
2010年
首謀者の不動産ブローカーの無期懲役が確定。
とまぁ、こんな流れがあったわけです。

そして、本作の魅力はキャスティングにもあります。
正義の御旗のもとに取材を続けながら、次第に常軌を逸していく雑誌記者には山田孝之。
悪を追い詰める正義のジャーナリストという役どころですが、次第に狂気を帯びていく様子を好演しています。
この人、最近こういう鬼気迫る役がはまってきましたね。
その記者に手紙を送った死刑囚はピエール瀧。「あまちゃん」に登場する寿司屋の大将です。
大将、怖かったです。
その死刑囚が「本当に悪い奴は塀の外にいる」と訴えたその悪党である不動産ブローカー
を演じたのがリリー・フランキー。
人の好い顔をしてここまでやるか、と彼の怪演もすごかったです。
さあ、いったいどんなお話なのでしょうね。続きは次回まで乞うご期待でございますよ。
続
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凶悪
監督/白石和彌、脚本/高橋泉、白石和彌、原作/新潮45編集部編『凶悪―ある死刑囚の告発―』(新潮文庫刊)、製作/鳥羽乾二郎、十二村幹男、撮影/今井孝博
出演
山田孝之/藤井修一、ピエール瀧/須藤純次、リリー・フランキー/木村孝雄、池脇千鶴/藤井洋子
9月21日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2013年、日本、128分、http://www.kyouaku.com/