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殿様の試写室

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止められるか、

俺たちを


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©2018若松プロダクション



あの時代、若い女子が一人で映画を観に行くと

必ず怪しげなおっさんが隣に座り

怪しげなふるまいに及んだものです。


文芸映画や抒情的な映画を観ている時でも

出物、腫物はともかく、

痴漢はところ選ばずでした。

ですから、若松孝二監督の映画は

観たことがありません。


映画館内での痴漢行為はいけませんねえ。

集中して映画を観ているのに

隣でモゾモゾされると

不愉快です。興が冷めます。気持ち悪いです。

嫌なので場所を移ると一緒に動いて

また再開するしつこい痴漢もいたりしました。


150歳になった今は

そういうことはないので助かります。

歳をとるのも悪いことばかりではありません。


あ、つい痴漢の話が長くなってしまいました。


痴漢はともかく

60年代末期から70年代にかけては

熱い時代でした。



若松孝二、足立正生、沖島勲、大和屋竺(やまとやあつし)

秋山道男、荒井晴彦、赤塚不二夫、大島渚――


足立正生は後に日本赤軍に合流して

人々をアッと驚かせた人物ですし、

沖島勲は「日本昔ばなし」の脚本を書いた

脚本家であり、監督です。

大和屋竺は若松作品以外にも

鈴木清順監督作品も手掛けた脚本家。

秋山道夫は若松プロ脱退後、

無印良品やチェッカーズ、小泉今日子の

プロデュースを手掛けるなど

多岐にわたる才能を発揮しました。

荒井晴彦は雑誌「映画芸術」編集長にして

脚本家、監督です。

赤塚不二夫、大島渚は

今さらご説明するまでもなく、

皆、あの時代を熱く生きた才能たちです。



ストーリー

21歳になった吉積めぐみは

1969年春、

新宿のフーテン仲間・秋山道男に誘われて

若松プロを訪れた。

そこは若者たちを熱狂させ、

時代の最先端をいく映画プロダクション。

当時33歳の若松孝二を中心とした

新進気鋭の若者たちの梁山泊だった。


理屈屋の映画監督・足立正生、

助監督で脚本家の沖島勲、

カメラマン志望の高間賢治、

インテリ評論家気取りの助監督・荒井晴彦――

撮影がある時も無い時も事務所にたむろし、

酒を飲み、ネタを探し、街で女優をスカウトし、

撮影が始まれば、助監督は現場で走り回り、

時には役者にもなった。


めぐみは初めての映画作りに

てんてこ舞いしながらも

若松孝二という存在

そして、映画作りにひきつけられていく。

だが、めぐみを若松プロに連れてきて、

助監督の全てを教えてくれた万引きの天才

秋山は若松プロを去っていった。

めぐみ自身も自分は何を表現したいのか

わからない自分への不安と焦りに

とまどっていた。


19715月カンヌ国際映画祭に

招待された若松と足立は帰国せず、

そのままレバノンへ。

そこで日本赤軍の重信房子らに合流し、

撮影を敢行した。


帰国後、

映画『PFLP世界戦争宣言』の上映運動の為、

若松プロには政治活動に熱心な若者が

出入りするようになっていく。


上映バスを見送るめぐみ。


違和感を感じながら一人、映画館で

若松の映画を観る。


そして、知らない内に涙が頬を伝い、

心で思う。

「やがては若松に刃を突きつけないと」……



ああ、思い出しますねぇ。あの頃を。

何かをしたい、成し遂げたいと思いつつ、

自分と周囲との間には見えない壁が

できあがっていて、一人でもがくのですねぇ。


おばさんもおじさんももがきながら

歳をとってしまいましたが、

確かにあの時代には

狂熱と呼んでいいものがありました。


あ、失礼しました。

150歳にとっては懐かしい時代ですが、

クールなお若い方々には

どうでもいいことかもしれません。

また「こんなもんじゃなかったよ」という

もっとハードな体験をなさった方も

おいででしょう。


が、しかし

吉積めぐみさんを演じた門脇麦さんの

戸惑うような様子が新鮮でしたし、

若松さんという方は

ある種「人たらし」の才があった

異能の人なんだなあと感じました。


やっぱりあの熱い時代が

懐かしくなる映画です。





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止められるか、俺たちを

監督/白石和彌、脚本/井上淳一、製作/尾崎宗子、撮影/辻智彦

出演

門脇麦/吉積めぐみ、井浦新/若松孝二、タモト清嵐/秋山道男、毎熊克哉/小水一男、山本浩司/足立正生、高岡蒼佑/大島渚、寺島しのぶ/前田のママ、奥田瑛二/葛井欣士郎、吉澤健/カプリコンマスター

1013()よりテアトル新宿ほか全国順次公開

2018年、日本、119分、配給/スコーレ




by Mtonosama | 2018-10-06 05:58 | 映画 | Comments(4)

止められるか、

俺たちを


-1-


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©2018若松プロダクション



若松孝二監督をご存知でしょうか。


2008年『連合赤軍 あさま山荘への道程』で

58回ベルリン国際映画祭で

最優秀アジア映画賞と

国際芸術映画評論連盟賞をW受賞


10『キャタピラー』では主演の寺島しのぶが

60回ベルリン国際映画祭で

最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞


‘12『海燕ホテル・ブルー』

1125自決の日 三島由紀夫と若者たち』が

公開された監督です。


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残念なことに20121017日に

交通事故で亡くなってしまいましたが、

まだまだ意気軒昂な監督でした。


亡くなった後も

13『千年の愉楽』(中上健次原作)公開。

1125自決の日 三島由紀夫と若者たち』は

65回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に、

『千年の愉楽』は

69回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門に、

招待されています。


さて、1936年生まれのこの監督。

農業高校を2年で中退し、家出。

上京して、職人見習いや新聞配達など

職を転々とした後はヤクザさんになり、

21歳の時には

チンピラ同士の喧嘩で逮捕されています。


出所後は実写版『鉄腕アトム』『鉄人28号』等

TV映画の助監督をしました。



1963年『甘い罠』で監督デビューし、

ピンク映画としては異例の大ヒットを放ち、

「ピンク映画の黒澤明」と呼ばれました。


1965年には若松プロダクションを設立し、

若松映画に集まった脚本家、助監督を

次々に監督デビューさせた人物です。


プロデューサー作品としても

『毛の生えた拳銃』(‘68 大和屋竺(やまとやあつし)監督)

『愛のコリーダ』(‘76 大島渚監督)

『戒厳令の夜』(80 山下耕作監督)

多数あります。


大勢の助監督や脚本家たちが

若松プロダクションを

まるで梁山泊のようにして集まっていた

60年代の最後の年に

同じく助監督として入り込んだ吉積めぐみ。

本作は、彼女の眼を通して描いた

熱かった時代と映画人と青春の

記憶と記録の映画です。


つまり150歳管理人の時代の映画です。


あ、すいません。


いえね、この時代を描いた映画を観ると

必ず知人がその役として出ているのですわ。


以前、『マイ・バック・ページ』という映画にも

https://mtonosama.exblog.jp/15918406/

https://mtonosama.exblog.jp/15934983/

15歳の頃の知人が出ていましたが、

今回も大学時代の知人が出ていて

ビックリしました。


いえ、俳優としてではないですよ。

その役として、です。


今回も

「そっか、彼はこんなこともしていたのか」

と映画に教えてもらいました。


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それはさておき

本作は、若松プロダクションが

若松監督の死から6年ぶりに

再始動して作った作品。


若松監督を演じるのは井浦新。

そうなんですね。

『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

1125自決の日 三島由紀夫と若者たち』など

若松監督作に出演してきた井浦が

若き日の若松孝二役を演じるのも

ポイントのひとつです。


その他、山本浩司が演じる足立正生

岡部尚が演じる沖島勲等

若松プロのメンバーが多数登場しますよ。

本作の監督・白石和彌も若松プロ出身です。


あ、そうそう。

本作では大切な役として登場する

吉積めぐみさんについても一言説明しないと。

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1948年生まれの彼女は高校時代

横浜の劇団蟹座に参加。

退団後、新宿でフーテンをしていた693月に

秋山道男と知り合い若松プロへ。

『女学生ゲリラ』(69 足立正生)

『処女ゲバゲバ』(’69)から助監督につき、

『日本暴行暗黒史 怨獣』(70)でチーフ助監督に。

715月ラブホテルで流す映画『うらしまたろう』

で監督デビューするがお蔵入りに。

71912日、新宿区中落合の借家で死去。

関係者の間では未だに

自殺と事故死の両説があります。


さあ、一体どんなお話でしょうか。

続きは次回まで乞うご期待でございます。




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止められるか、俺たちを

監督/白石和、脚本/井上淳一、製作/尾崎宗子、撮影/辻智彦

出演

門脇麦/吉積めぐみ、井浦新/若松孝二、タモト清嵐/秋山道男、毎熊克哉/小水一男、山本浩司/足立正生、高岡蒼佑/大島渚、寺島しのぶ/前田のママ、奥田瑛二/葛井欣士郎、吉澤健/カプリコンマスター

1013()よりテアトル新宿ほか全国順次公開

2018年、日本、119分、配給/スコーレ




by Mtonosama | 2018-10-03 06:17 | 映画 | Comments(2)